KABO個展「Villu」終了報告

KABO個展「Villu」終了報告

3月9日から開催したKABO個展「villu」は、3月15日に最終日を迎えた。7日間の来場者数は約180名だった。

会場となる306号室の活動では、朽ちていく姿を維持しつつ活用していくという姿勢をとっているので、壁打ちなどはできない。それを逆手にとって、大きな写真を床に大胆に設置。その一方で、小さなモノや写真は、繊細な味付けになっていると同時に、対話を生むいくつもの要素として備わっていた。

企画者としての気づき

アーティストはステートメントでこう書いている。

306号室を訪れた時、真っ先に祖母の顔が浮かんだ。彼女が叶えたくて叶えられなかったさまざまな事。
部屋の痕跡にそれが詰まっているような気がした。

彼女が306号室を初めて訪れた時、私は、この部屋で美容室を営んだ女性・スダさんの話をした。彼女の祖母はスダさんと同世代なのだが、そのことから、アーティストは祖母という個人的なテーマと共に、祖母とスダさんに共通する『誰でもない人』というメタ的なテーマを用意した。

『誰でもない人』は言い換えると『名前が残らない人』だ。私もその一人だろう。私は今回の展覧会で、彼女が祖母や須田さんのことを語る姿に、私がこれまで306号室に来た人にスダさんを語る姿を重ねていた。そして、この行為はある種の『語り部』だと思い至った。そう気づいたのは、彼女が祖母やスダさん『誰でもない人』について語った際に、来場者が自分事として語り始めた時だった。こういうことが起こるのも、展覧会に在廊する意味の一つなんじゃないかと思った。

細い繋がり

人は皆偶然出会っているといえばそれまでなのだが、KABOさんと私はこの展覧会を企画する前はあまり会って話していない。会った時間はトータルで3時間くらいか。最初の出会いは、4年前に私が企画した、85年生きられた家でのアート展「PRIVATE HOUSE」に彼女が来てくれたことだった。その際に熱海での展示の話を伺い、機会があったらぜひ見てみたいと思った。

そして、昨年の「ATAMI ART GRANT」では、ホテルのあちこちがKABOさんの展示場所だった。稼働中のホテルの客室、元客室、バー、階段室、エレベーターホールなど、それぞれのインスタレーションを鑑賞した。そして、部屋を使う上での制約がある中で部屋に合わせて工夫をすることに面白さを感じ、同じく制約が多い306号室で行ったらどうなるのだろうと思った。

その妄想が頭から離れない状態で熱海を再訪したら、偶然KABOさんに会い、実験美容室にお誘いした。今回の展覧会は、そういう細い繋がりという縁から生まれたのか、と改めて気づいた。