生きられた家での在廊日記(2022.5.27)

生きられた家での在廊日記(2022.5.27)

2022年5月27日

5月27日(雨のち晴れ)

今日も雨。そのせいではないだろうけど来場者が少なく四組だった。が、その分色々な話を聞けた。ご自身のおばあちゃんの家を思い出した方。おばあちゃんの家を取り壊す前にカフェとして開き友人をもてなした方。住んでいた家を壊すところを見たくなくて避けていた方。

最後の話はなんとなくわかる気がした。私の場合は震災で被災した母校の小学校だけど。学校は自分がいなくなっても存在しているものだと思っていて、存在すら忘れて生きていたのに、突然破壊されるとなぜか気持ちの持ってきようがなくて、不思議な感覚を覚える。おばあちゃんの家というものも、それが当たり前な人にとっては無くなるのは耐え難いのかもしれない。

おばあちゃんの家を思い出したという方は懐かしさだけではなくて、ちょっと胸苦しさを感じたという。香りとともに思い出すのが楽しみなような、切ないような、と書かれた感想ノートを見て、頭の中であっと声がもれた。

楠尚子さんの香りのプロジェクト「タイムカプセルプロジェクト」はこちらの想像を超えて様々な記憶が集まるのではないだろうか。二階の音楽室に楠さんが調香した香りがただよい、来場者はこの部屋で香りを確かめ、持ち帰ることができる香りを家で確かめ、一年後に一緒に確かめるというプロジェクト。この構想を聞いた時は一年後に一年前の記憶を確かめるのかと思ったのだが、実は一年前(つまり今)に会場となったこの家で何を思い出していたかということまで確かめることになる、つまり記憶の連鎖なのかもしれないと思った。そう言われてみれば、調香した香りも一つの香りの成分でできているのではなく、複数の成分でできている。香り自体が作った人たちの記憶の連鎖なのかもしれない。

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